龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
女王陛下よりご下問があり、すぐに答えた。
「そなたがアリシアですか?」
「は、はい。アリシア・ブルームと申します」
膝を折って、深々とお辞儀。スカートのさばきは練習したから大丈夫だ。
許されるまで頭を上げてはいけない。
ドキドキと心臓が暴れて、身体が震えそうだ。でも、あたしはおばあさまの名前で呼ばれた。なら、その名前に恥ずかしくない振る舞いをしなきゃいけない。
それから、ヴァイスさんの評判も傷つけることがないように。
(こうなったら、腹を括ろう)
女王陛下はヴァイスさんのお母様だ。
好きなひとのお母様……。
なら、お会いできて幸せなんだ。
「アリシア、顔をお上げなさい」
「はい」
お許しがあったからゆっくりと顔を上げると、女王陛下のお顔を初めて拝見できた。
白銀色の髪の毛をゆったりと結われ、白い肌に水色の瞳。銀色のドレスを身に着けられ王冠を被られてらっしゃるけど…お顔が、ヴァイスさんのにそっくりの美貌。とても40過ぎとは思えないほどお若くいらした。
「ヴァイスからよく話を聴いています。あの子は昔からどこか一歩引いたような、冷めた面があったが…そなたと暮らすようになり、ずいぶん楽しそうである。その点に感謝したい」
「い、いえ…そんな。わたしは…ただ、僭越ながら竜騎士を目指しているだけです」
女王陛下より思わぬお言葉をいただけて、思わず頭を横に振った。
令嬢らしからぬ失敗だ…。