龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「……なによ、ハワード。あんたの相手をする気はないんだけど」

こんな落ちた気分の時に、よりによって一番厄介な同級生に会うなんて。どうせろくでもない絡み方をしてストレス解消するために来たんだろう。
あいにくこちらは黙ってドアマットになるつもりはない。

相手にするつもりはないからバルコニーから出ようと踵を返すと、なぜか手を掴まれた。

「待てよ!ボクの話を聴け」
「離しなさいよ!あたしはあんたと話したくない」
「へ、そんなこと言ってていいのか?おまえ、パートナーいないんだろ?」
「………」

あたしが思わず口を噤むと、ハワードはそれ見たことか!と言わんばかりにほくそ笑んだ。

「そら、見ろ!どうせヴァイス殿下にフラレたんだろ?ま、おまえみたいな田舎娘が殿下に相応しいはずがないがな〜ハハハ!」

やっぱり、最低だこいつ。
いちいちパートナーがいないことをあげつらい、からかいに来たなんて。どれだけ性根が腐ってるんだろう。
しかも、バルコニーから控え室はすぐそこ。話し声なんて筒抜けだ。つまり、ハワードの言葉はすべてデビュタントたちに聞こえてる。

「……あんた、最低だね」
「へ、なにがだよ?身分もないくせに高望みするからだろ?ヴァイス殿下は最初からおまえみたいな田舎娘なんて相手にするはずないだろ」

気にするな、と思うのに。ハワードの言葉がぐさりと胸に突き刺さった。

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