内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
三月末の土曜日、午後。大勢の人が行き交う出発ロビーで過ごす最後の時間はどうしても言葉数が少なくなったが、ベンチで肩を寄せ合い、ぽつぽつとたわいない話をした。
やがて飛行機の搭乗時間が近づき、龍一さんがベンチから腰を上げる。そして隣に立った私の頬に軽くキスをすると、まっすぐ瞳を覗いた。
「真智。帰ってきたら、伝えたいことがある」
言おうとしていたことを先に言われ、どきりと胸が跳ねる。
龍一さんの話ってなんだろう。いい話? 悪い話?
予想もつかないけれど、私には私の伝えたい想いがある。
「私もです。龍一さんにお話ししたいことがあります」
「……わかった。楽しみにしているよ。元気でな」
「龍一さんも、どうか体に気を付けて」
泣きたい気持ちを堪え、搭乗ゲートの方へ消えていく広い背中を見送る。
彼と離れる三年間は、きっと短くないだろう。でも、その切なさに耐えれば、今度こそ胸に閉じ込めていた想いを解放することができる。
「ずっと、待ってますから」
自分にだけ聞こえる声で、確かめるように呟いた。
彼の姿が見えなくなると、帰宅するために体の向きを変え歩きだす。