内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

 その直後、前方から見知った女性が大きなキャリーケースを引いて歩いてくるのが見えた。

 なぜ、彼女が空港に……?

 長い髪からバラの香りをまき散らす彼女は、立ち尽くす私の正面でぴたりと足を止める。

「あら羽澄さん、こんにちは。専務の見送り?」
「う、うん……。小峰さんは? 旅行?」

 今日は土曜だし、彼女の服装は大ぶりの花がプリントされている派手なワンピース。プライベートな用事だと勝手に推測する。

「いいえ。仕事よ」
「仕事……? 広報部の?」
「まったく察しが悪いんだから。私も専務と一緒に行くのよ。シンガポール支店」
「えっ?」

 寝耳に水の話に、ぎゅっと眉根が中央に寄る。小峰さんは高らかに笑った。

「ダメもとでパパに頼んでみたのよ。どうしてもシンガポールで勉強がしたいって。そうしたら渋々許可を出してくれたわ。使えるコネは使わないとね」

 パパ……小峰常務のことだ。しかし龍一さんはなにも言っていなかった。小峰さんの動向には注意していたはずなのに。

 同じシンガポールの地に行くにしても、彼女と一緒に仕事するわけではないだろうから、言う必要がないと思っただけ?
 
 胸に立ちこめる暗雲を、必死で振り払う。

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