内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「生活費は全面的にこちらで持つし、今まで通りきみが仕事と勉強に集中できるような環境を提供する。最初だけ、両親に会ってもらったり会社へ報告する件で面倒をかけるが、それ以降は単なる同居人くらいの心持ちで気楽な関係を築ければと思っている。どうか前向きに考えてみてほしい」
専務が真剣な表情で頭を下げるので、慌ててしまう。
Sparcil創業家の御曹司かつ、次期社長という重要な役割を控えている彼にとって、偽装結婚は欠かせない条件のようだ。
「わ、わかりましたから頭を上げてください! とりあえず、家族に相談してからお返事する形でもよろしいでしょうか? 私、姉と同居しているんです」
「もちろんだ。それじゃ、食事を済ませたら連絡先を交換しよう」
「はい……」
まだ入社五年目の平社員である私が、プライベートな用件を理由に専務と連絡先を交換するなんて……テストの成績でトップを取った辺りから現在に至るまで、ずっと白昼夢を見ているのではないか思うほど目まぐるしい展開だ。
家に帰ったらすぐ姉に相談しよう。姉は看護師として日々色々な人と接しているせいか、私よりずっと世間を知っているし、現実的な思考の持ち主。きっと的確なアドバイスをくれるはずだ。
とりあえずこの場で決断する必要はなくなったので、偽装結婚の件は一旦頭の隅へ追いやり、手付かずだった料理にようやく箸をつけた。