内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「とすると、もう少し厚みを持たせた方が?」
責任者の男性にそう尋ねたのは課長だ。私の能力を買ってくれているらしく、こうした現場などによく同行させてくれる。
彼は文具に並々ならぬこだわりを持っており、開発部として譲れない部分に口を出されてしまうと、現場を納得させるまで長話が続いてしまうのが常だ。
「それか、この細い部分をなくすかですね」
ボールペンのクリップ部を撫でながら、現場責任者が呟く。石狩課長の目の色が変わった。
「いえ、この形は譲れません。ワイシャツのポケットに差した時の見栄えを計算し尽くしているんです。見てください、この弓矢のような鋭いフォルムを。文具でありながらファッションの一部としても機能する。それがこの商品の売りなんです。調整するのは形でなく、厚みでお願いしたい」
「そ、そうですか……わかりました」
たじたじになる責任者の男性に、「お手数ですがお願いします」と笑顔でフォローを入れる。
ここで意見がぶつかると収拾するまでに時間がかかるので、今回は穏便に済みそうでホッとした。