旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「聡一さん! もうこれ以上は心臓が持たない」
「ふふふ。すみません。あなたがあまりにもかわいいから、止められなくなってしまいました」
「聡一さんは時々いじわるですね……でも、嬉しかった」
「うん。美咲さんは随分と心を開いてくださいましたね。結婚式のときはまだ怯えているようでしたから」

 その言葉で美咲は合点がいった。結婚式のときの美咲の様子を気にして、聡一はここまで慎重になっていたのだろう。

 美咲は結婚式の誓いのキスのとき、それはそれは緊張していたのだ。何せ初めてのキスだ。それをまさか人前で行うことになるなんて緊張するなというほうが無理だった。体はガチガチに固まり、恐らく震えてもいたと思う。緊張のあまり早く終わってほしいなどと美咲は思っていたのだが、聡一はそんな美咲に本当にそっと軽く触れるだけのキスを美咲の額へと落としたのだ。それは美咲への気づかいで溢れるキスだった。美咲はてっきり唇にするものだと思っていたから拍子抜けして、一気に緊張が解けたのを覚えている。

「……あれは……その」
「大丈夫ですよ。わかっていますから。ちゃんとあなたが教えてくれたでしょう? 私が初めての交際相手だと」
「はい……」
「言いづらかったでしょうに、あなたは正直に伝えてくれました。私は、そんなあなたの気持ちに報いたいと思ったんです」
「聡一さん」
「決してあなたが怖がるようなことはしませんから安心してください。私はあなたを幸せにしたいんです」
「聡一さん、私怖くないです」

 美咲は聡一になら何をされても怖くないというつもりでその言葉を口にしたのだが、聡一はそうは受け取らなかったようだ。

「はい。では、もう一度してもいいですか?」

 美咲が頷くと、聡一はもう一度額へ優しく口づけてくれた。やはり愛されているという実感が湧いて嬉しくてたまらない。きっと美咲はだらしない顔を晒していたことだろうが、聡一は優しく微笑んでくれるから、美咲は嬉しい顔をやめられない。聡一はその日一日何度も美咲の顔に口づけてくれて、美咲は夢のような一日を過ごした。
< 113 / 177 >

この作品をシェア

pagetop