旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「そうだったんだ。え、そんなのもう確定演出じゃん!」
「もう千佳は言い方がやらしい」
「やらしいことしたいくせに」
「そうだけど。そうやって言われると恥ずかしいの」
「ここまできても美咲は初心だね。でも、ようやくか。むしろさ、キスの先まで行くんじゃない?」

 聡一の口ぶりからしてそれはないと美咲は思っていた。たぶん、そこに行くには別の覚悟が必要だと思っている。だが、まったく意識しないわけでもないから、そういうことも起こる前提で挑むべきかもしれないとは思っていた。

「どうかな? ……まあ、一応覚悟はしていく」
「あー……いや、美咲はそういう覚悟はしないほうがいいかも。絶対緊張して上手くいかなくなる」
「……確かに」

 思い返してみれば、緊張して変な態度を取った過去がいくつも蘇る。千佳の言う通りかもしれない。

「流れに身を任せればいいと思うよ。旦那さんは無理に迫ったりするような人じゃないでしょ?」
「うん。それは絶対ないって言える」
「なら、自分がしたいって思う気持ちに従うのがいいよ、美咲は」
「うん」
「きっと旦那さんはいっぱい愛を囁いてくれるでしょ?」
「……うん。言ってくれると思う」
「雰囲気のあるところで好き好き言われたら、自然とそういう気になるって」
「そうかも……うん……うん?」

 千佳の言葉に同意しつつ、美咲はその言葉に何か引っかかりを覚えた。
< 116 / 177 >

この作品をシェア

pagetop