旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「……何どうしたの?」
「違和感が……」
「違和感?」

 千佳の言葉を自分の中で反芻する。そうすると美咲はある事実に気づいてしまった。

「あ……! 好きは言われてない」
「は?」
「聡一さん甘いこといっぱい言ってくれるけど、『好き』って言葉はプロポーズのときにしか言われてない……気がする」

 プロポーズをしてくれたときは、はっきりと美咲のことが好きだと告げてくれたが、それ以外で好きだと言われた記憶がない。

「え、そうなの? なんか意外だね」
「うん……」
「大丈夫? 不安になってない? ちゃんと美咲のこと好きだと思うよ?」

 美咲が黙り込んで聡一とのこれまでの時間を振り返っていたら、千佳にいらぬ心配をさせてしまった。好きと言われていなかったとしても、聡一はそれ以上の言葉で愛を示してくれているから、特に不安には思わない。美咲はむしろもう一つの重大な事実に気づいて、そちらが気になりはじめていた。

「え? あ、うん。大丈夫大丈夫」
「それ以上の愛情表現もらってるんだから、それ信じてればいいよ」
「うん。聡一さん、真っ直ぐ伝えてくれるから、その……私に好意を持ってくれてることはちゃんとわかる。むしろなんでそこまで? って思うし」
「それだけ美咲が好きなんでしょ?」
「まあ、いっぱい愛されてるなとは思う。それに比べて……私がポンコツすぎる……はあ」

 美咲は大きなため息をついた。美咲が気づいたある事実が美咲に重くのしかかる。
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