旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「マジか……それは私でもおかしいと思うわ。旦那さん仕事忙しいとか?」
「うーん、まあ忙しそうなときもあるけど、休日は基本家にいるよ?」
「旦那さんも土日がお休みなんだよね?」
「そうだね」
「え、じゃあ、一緒の家で休日過ごしてるんだよね? 何してんの?」
「互いの趣味に勤しんでる」

 聡一は見合いのときにも話していた通り本を読むのが好きらしく、家ではほとんど本を読んで過ごしている。美咲もそんな彼の邪魔をするのは悪いと思って、漫画を読んだりドラマを見たりと各々の趣味の時間ばかりが充実しているのだ。

「は? 何してんのさ……え、会話とかもない感じ?」
「会話は普通にするよ? うーん、何ていうか優しい同居人? って感じかな」
「同居人て……」

 千佳がまた何を言っているんだという顔で見てくるが、事実だから仕方ない。

「本当にそうなんだもん。快適同居ライフを送ってる……」
「ぶはっ、快適同居ライフってなんなの」

 冗談じゃなく本当に快適同居ライフなのだ。彼がただの同居人であったなら、美咲は間違いなく幸せな日々を過ごしている。

「だってよ? 私が仕事で疲れてたら家事全部やってくれるし、反対に私がしたときは必ずありがとうって言ってくれるし、私の好物作ってくれて、好きな漫画の話聞いてくれて、今日の服装とかも褒めてくれて、しかも朝から晩までずっと優しく笑ってくれるんだよ。快適以外の何物でもないでしょ」
「え、そんないい雰囲気でなんで進展しないわけ?」
「そんなの私が知りたい……」

 美咲は悲しくなってしゅんと項垂れた。

「そんな落ち込まないでよー。えー、じゃあ、初夜! 初夜は? さすがに何かあったんじゃないの?」
「あー、初夜ね……」

 美咲はそれを思いだして何とも複雑な気持ちになった。
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