旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「旦那さんある程度年上だよね? 大人の男はあんまりイチャイチャしないんじゃない?」

 確かにそういうタイプでもないだろうし、積極的にイチャイチャしたくはないのかもしれない。だが、何もないのはやはりおかしい気がする。

「でもさ、何にもないんだよ? さすがにおかしくない?」
「何にもって、例えば?」
「全部だよ。世の中のカップルがすること何一つやってない……」
「え、何一つって……え? 本当に何も?」
「何も」
「は? もう結婚して半年は経つよね?」
「うん」
「ごめん、もうちょっと正確に教えて。そのつまりはヤってないってことだよね?」

 千佳の明け透けな物言いに羞恥心が湧くが、話を進めるためにそこはグッと堪えて返事した。

「……うん、それもない」
「も? キスは?」
「ない」
「ハグとかの触れ合いは?」
「ないよ」
「いやいや……え、じゃあ、逆に何があるの?」
「だから、何もないんだってば。デートすらしないもん」

 そう、美咲と聡一はデートすらしていないのだ。プロポーズまでの食事が唯一デートと言えるものだった。結婚までの間はいろいろと準備があって忙しかったから、何もなかったのはまだわかる。だが、結婚してからもこんなに何もないとは思わなかった。美咲は毎週デートに出かけたいくらいの気持ちでいたから、それはそれは落ち込んだ。
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