旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「美咲さん。あなたは私よりもずっと強いお人ですね。まったく敵わない。あなたが覚悟を決めてくださったのに、私が逃げるわけにはいきませんね」
「え?」
「美咲さん」

 聡一に真剣な目で見つめられて、美咲は思わず唾をごくりと飲み込んでから返事した。

「はい」
「……私も、美咲さんのことが好きです。あなたを愛しています。私の言葉、信じてくださいますか?」
「え?」

 まさかの愛の言葉で拍子抜けしたが、続きの言葉の意味が美咲にはわからなかった。

「あなたを好きだという私の言葉、信じてくださいますか?」
「はい……? もちろん」

 聡一が嘘を言うわけないし、そもそもこれまでに嫌というほどその想いを見せつけられてきたのだから、信じないわけがない。だから、もちろんだと返したわけだが、聡一は美咲のその言葉を聞くと突然美咲を強く抱きしめてきた。

「よかった……美咲さん! ありがとう!」
「え、聡一さん?」
「やはりあなたは素直で優しくて真っ直ぐな方ですね。よかった。あなたが信じてくれて本当によかった」
「え? 聡一さん、どうしたんですか?」

 聡一は美咲に抱きついたまま泣きはじめてしまった。顔は見えないが耳元ですすり泣く声が聞こえてくる。なんで泣いているのかわからなくて、美咲はひどく混乱したが、聡一が落ち着くように、しばらくの間聡一の背をゆっくりと撫でてやった。

「聡一さん? 大丈夫ですか?」
「すみません、取り乱して」
「いえ」

 聡一は体を離すと美咲と目を合わせ、微笑みを浮かべつつも少しだけ苦しそうな表情をした。

「美咲さん、好きですよ。ずっと言いたかった。言えなくて苦しかった」
「へ? なんで?」

 聡一も美咲と同じ苦しさを抱えていたのだろうか。だが、たくさんの愛の言葉を囁いてくれる聡一が、好きを言えないなんてまったく意味が分からなかった。

「ちゃんと理由もお話します。美咲さんにとっては面白くない話かもしれませんが、誤解を与えたくはないので聞いてくださいますか?」
「はい」

 美咲が頷くと聡一は静かに聡一の過去を語りはじめた。
< 147 / 177 >

この作品をシェア

pagetop