旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「もう、そんなこと言ってたらいつまで経っても進まないよ? デートくらい我儘じゃないって。自分から誘ってみなよ。もしかしたら向こうも待ってるかもよ?」

 確かに自分が待っているように向こうも同じである可能性は否定できない。とはいえ、どう誘えばいいかなんて初心者の美咲にはわからない。

「うーん。でも、どうやって? いきなりデートしてなんて言えないんだけど」
「半年こじらせてるからねぇ……はっきりデートとは言わずに、買い物に付きあって、とか、映画観に行こう、とか言えばいいんじゃない?」

 目から鱗だった。そんなにスマートなやり方があるのかと美咲は感心するばかりだ。どこに行くかを決めるところから相談しなければならないと思っていたが、なるほど、自分で決めてそれに誘えば、自然に誘うことも可能そうだ。

「天才! 映画いいかもしれない。聡一さん、読書好きなんだよね。映画も気に入りそう」
「いいじゃん。よし、来週旦那と映画に行ってこい!」
「来週!?」

 もっと頭の中でシミュレーションしてから事を起こそうかと思っていたから、千佳の来週という言葉に過剰に反応してしまった。

「善は急げ! こういうのは勢いが大事だから。打倒仏様!」
「……仏様を倒していいの?」
「そこはノリだから、突っ込まないで。とにかくイチャイチャライフを手にしよう!」
「うん! ってなんで千佳が楽しそうなの……」
「どう考えても楽しそうじゃん。それに恋愛に奥手だった美咲がさ、結婚までしたんだから、上手くいってほしいじゃん」

 千佳が本気で美咲を応援してくれているのだとわかる。時折茶化すようなことも言ってくるが、それだって美咲が話しやすいようにそうしているのだと知っている。千佳に強く励まされているとわかって美咲は本当に嬉しかった。

「千佳……ありがとう」


 かくして美咲の目指せイチャイチャライフ! の日々が始まったのだった。
< 23 / 177 >

この作品をシェア

pagetop