旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「ほら、ボディタッチとかしたら、案外コロッといくかもよ? もうさ自分から全部いっちゃえばいいじゃん」
「いくって?」
「デートしよ? キスしよ? セックスしよ? って」
「ちょっ!? しっ!」

 美咲は思わず千佳の口を両手で押さえた。今二人はファミレスにいるのだ。他の人もいる場所で、堂々と口にするのはやめてほしかった。

「ほら、そうやって慌てるんだもん。そんなんだから進まないんだって。デートしようって言うくらい別にいいじゃん」
「だって、したことないのに、自分から言うのはハードル高いもん。それにそういうの苦手かもしれないって思うと言いづらい……」

 それが美咲の本心だった。昔から美咲は相手の気持ちを考えて二の足を踏んでしまうところがあった。何が正解かわからなくて、結局何も行動を起こさずに終わることがしばしばあった。

「そこが引っかかってんのね……その思いやりは美咲のいいところだと思うけど、旦那には多少我儘になってもいいんじゃないの? 私の前とかだともっと自由に振る舞ってるじゃん」
「それは千佳だからだよ。それに聡一さん優しいから、私が我儘言ったら絶対全部受け入れるもん。それはなんか嫌じゃん」

 あの聡一なら、きっと美咲が望めばなんだって叶えてくれるはずだ。だが、無理強いして応えてくれてもちっとも嬉しくはない。
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