旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 雑貨店を出たあとも二人はいくつかの店を見てまわり、美咲が十分満足したところで二人はショッピングモールの外に出た。

 今、二人は二階に繋がっている通路を歩いている。通路の少し先は二股に別れており、一方はすぐ目の前の歩道に繋がった階段、もう一方は道路の上を渡る歩道橋になっている。美咲たちは向かい側の歩道に行こうと歩道橋を目指しているのだが、美咲が何気なく階段のほうに目を向けると、そこに少し気になる様子の人を見つけてしまった。ベビーカーを押した一人の女性が立ち往生しているように見えるのだ。もしかしたら困っているのではないかと気になってちらちらと見ていたら、隣にいた聡一もそれに気づいたらしく彼はすかさず行動に出た。

「美咲さん、ちょっと待っていていただけますか? あの方を少しお手伝いしてきますね」

 そう言って女性のほうへ向かおうとするので、美咲は自分も行くと言って慌てて追いかけた。

「お手伝いしますよ? 階段下まで行かれたいのですよね? お運びします」
「え? あ、ありがとうございます。すみません」

 やはり女性は困っていたらしい。すぐ近くのエレベーターが点検中で使えなかったようだ。ベビーカーに乗っていた子供を女性に抱いてもらい、聡一がベビーカーを、美咲が女性の持っていた荷物を持って、階段下へ下りた。

「本当にありがとうございます。大変助かりました」
「いえ、お役に立ててよかったです」

 何度も礼を言うその女性に美咲と聡一も会釈を返し、今下りた階段を上ると目的の方向へ向かって歩きはじめた。

「美咲さん、ありがとうございます。お手伝いくださって」
「いえ、とんでもないです。聡一さんはすごいですね。自然とこういうことができて」

 美咲は心から彼に感心していた。こういう場面に出くわしたとき、美咲は気にはなっていても、なかなか行動に移すことはできない。それなのに、彼は迷わず動いていた。本当に尊敬してやまない。自分も彼のような人間になりたいと強く思う。

「私はそういう性分なだけですから。それに美咲さんも手伝ってくださったでしょう? あなたもとても素晴らしい人ですよ」

 そんなふうに言ってくれる彼に恥じぬ自分でありたいと思う。彼と一緒にいれば、美咲は一回りも二回りも成長できるような気がした。
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