敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「高垣の実家、ここからそこまで遠くないだろ。今度遊びに行くよ」
「ええ? 何もないところだよ」
「何もなくはないだろ。案内できるスポットを考えておいて」
神野の友情を嬉しく思った。ずっとともに働いてきた神野には戦友のような感情がある。
私たちは笑顔でランチを終えた。
その日の帰り道、総務部で挨拶をし、花束を手に副社長室に向かった。
ちょうど要さんが戻っているはずだった。最後の挨拶をしたかった。おそらくもう会うこともないのだ。
「高垣さん、お疲れ様でした」
中杉くんがデスクから顔をあげると、副社長デスクにいた要さんが立ち上がった。
「悪い。中杉、五分ほどはずしてくれるか」
中杉くんは一瞬止まったが、すぐに笑顔で「はい」と答え、副社長室を出ていった。
「要さん、本日までお世話になりました」
「高垣、おまえに話したいこと、話せていないことがたくさんある。俺は、このままおまえを退職させたくない」
要さんはまっすぐに私を見つめていた。あの夜に対する誠意だろうか。だけど、私はなにひとつ彼から受け取る資格はない。
「本当にお気遣いは要りません。楽しい思い出だけを持って、岩切製紙を去るつもりです」
「会いに行く。高垣のもとへ」
「ええ? 何もないところだよ」
「何もなくはないだろ。案内できるスポットを考えておいて」
神野の友情を嬉しく思った。ずっとともに働いてきた神野には戦友のような感情がある。
私たちは笑顔でランチを終えた。
その日の帰り道、総務部で挨拶をし、花束を手に副社長室に向かった。
ちょうど要さんが戻っているはずだった。最後の挨拶をしたかった。おそらくもう会うこともないのだ。
「高垣さん、お疲れ様でした」
中杉くんがデスクから顔をあげると、副社長デスクにいた要さんが立ち上がった。
「悪い。中杉、五分ほどはずしてくれるか」
中杉くんは一瞬止まったが、すぐに笑顔で「はい」と答え、副社長室を出ていった。
「要さん、本日までお世話になりました」
「高垣、おまえに話したいこと、話せていないことがたくさんある。俺は、このままおまえを退職させたくない」
要さんはまっすぐに私を見つめていた。あの夜に対する誠意だろうか。だけど、私はなにひとつ彼から受け取る資格はない。
「本当にお気遣いは要りません。楽しい思い出だけを持って、岩切製紙を去るつもりです」
「会いに行く。高垣のもとへ」