神獣使いのお気に入り

宮殿に勤めて3年。西棟に近づいたこともなかったフィリカは迷子になっていた。

18時を過ぎて人通りの少なくなった宮殿を出歩くのも初めてだ。

煌びやかな装飾で飾られた廊下と赤い絨毯は私たちの区域とは異なって特別感があり西棟であるはずには間違いない。

ようやく人影が見え、縋る思いで声をかけた。

「すみません、お尋ねしたいのですが」

振り返ったその人はとても美しい男性だった。

金髪とサファイアの瞳。身に付けている服も高貴な位だと明らかな装いだ。

「どうかしたのか?」

「道に迷ってしまって…。西棟に伺うよう言われていたのですが。」

見慣れないメイドに不信感を覚えつつ、優しい声色を出せば少し嬉しそうに要件を話した。

美しい娘だと感じたが、この時間に西棟とは逢瀬か何かだろう。怪訝に感じたが顔には出さない。




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