神獣使いのお気に入り

西棟と南棟はそれだけ特別な場所である。

西棟には王族側近である騎士団や聖職者、上級貴族の王宮邸などの住まいがある。

一方、南棟は王族の住まいがある。

普段は一部の限られた人間のみが入ることのできる棟のため、メイド達は浮き足立つのだ。

そんな中、下級メイドであるフィリカは獣舎の清掃に勤しんでいた。

獣舎にはこの国で神獣と崇められている白狼の赤ちゃんが15匹暮らしており、メイド全員が集められる特別清掃に呼ばれても手を休めることが出来ずにいた。

同じ獣舎で働く他の仲間はみんな宮殿の大広間に行ってしまった。

とはいえ、フィリカは農家の娘で生き物を放って特別清掃に行くことはできなかったし、なによりこの清掃で貴族や高貴な身分の方に見初められたいという考えも持ち合わせていなかったので問題はなかった。

目の前にいる可愛い白狼たちの方がフィリカにとってはとても大切な存在なのだ。




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