神獣使いのお気に入り

淡いピンクのローズヘアを頭の上で纏めておだんごを作りエメラルドの瞳を持つフィリカは美貌に恵まれている。

下級メイドの銅色のエプロンに土ぼこりと白狼たちの毛で汚れているためパッと見るだけではその美貌に気付きにくい。

それでも一生懸命神獣の世話に勤しむフィリカは騎士団のメンバーからは認知されている。

休日にお茶に誘われるなどデートの申込は絶えないが本人が疎くその人気には気づいていない。

「フィリカ嬢は大広間に向かわないのか?」

そんな声が聞こえて白狼と戯れていた手を止め、顔を上げると騎士団長であるユリウス様が不思議そうな顔をしてわたしを見ていた。

サファイアの瞳に銀髪、軍服を着ていてもわかる鍛え抜かれた身体と反して甘いマスクと中性的な雰囲気を持つこの国の騎士団のトップ。

慌ててお辞儀をすると手で制される。

「ユリウス様、本日は遠方への視察で戻られないと聞いておりましたが…」

「特別清掃が入る前に戻っておきたくてな。」

そういえば数年前の特別清掃でメイドがベッドの下に身を潜めており寝込みを襲われたという話を噂で聞いたことがある。

もちろん、そのメイドは家に返されたというらしいがここまで整った容姿に騎士団長という肩書きはメイドを拐かす存在だ。


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