神獣使いのお気に入り
あの言葉が本心なのかはわからないが、エプロンのポケットにはメモが入れられ、綺麗な文字で西棟4階A1207とユリウス様のサインが書かれていた。
ユリウスが住まう居住区であろう部屋番号
わたしのような下級メイドが立ち入るなんて畏れ多い。
特別清掃は貴族出身である上級メイドが居住区の清掃をして、私たちには共有の廊下や食堂、物置部屋などの雑多な清掃しか回ってこないと聞いている。
しかも、わたしは白狼たちの毛だらけだ。
それでも目をキラキラさせてブラッシングの順番を利口に待つ白狼を放ってはいけない。
毛並みを整えて気品を纏うこの子達を精一杯お世話したいのだ。
全てのブラッシングを終えた17時過ぎには獣舎係の子たちが戻ってきて、西棟や南棟の美しさをうっとりと語ってくれた。