例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても

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母の着替えを、畳んで、戸棚に仕舞う。
代わりに洗濯物を袋に入れて、持ってきたリュックに仕舞う。

それから百均で見つけた、折り畳める花瓶という便利な物に水を入れて、摘んできた菜の花を挿した。

母の寝顔を見つめ、沙耶は聞こえない位の溜め息を落とす。

窓に目を移すと、青い空と山が、こちらを見下ろしている。


――山になりたい。

沙耶は、ふとそんなことを思った。

秋元家が運営していた会社は、ひとつではなく。
銀行と観光会社、そして百貨店運営だと、さっき聞いた。
手広過ぎて目が回りそうだが、今回騒いでいるのは、その内の百貨店部分だという。何とかして解決する必要がある。
だがそんなノウハウは沙耶にはない。

悩みに悩み、母の病院まで来たら、母は眠っていた。
それはそれは気持ちよさそうに夢の中へ行っているので、起こすのも不憫だと思い、今に至る。


――やっぱりこの格好じゃダメだ。


沙耶は自分を見て思案顔になった。
本日の沙耶の格好は、濃いベージュのロングスカートに緑の長袖。

咄嗟に家にあった服を頭の中で、並べる。
そこに過るのは。


秘書をやっていた頃の自分だった。



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