例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
執拗に問いかける駿のせいで、沙耶の頭にまた甦る。
『俺のお嫁さんになって。』
真剣な石垣の眼差し。
切ない顔。
「わぁ!!!!わぁわぁわぁ!!!」
「なんだよ?どうしたんだよ?」
ぼっと顔を赤くした沙耶の発する奇声に駿は一瞬たじろぐ。
「うるさいうるさいっ。あんたのせいで、変なこと思い出しちゃったじゃないのよ!」
「変な事って何だよ?てか、姉ちゃん顔赤くねぇ?やっぱりあの二人と何かあっ……てぇ!!!」
追及を止めない駿の顔に、沙耶は傍にあったクッションを投げつけて、部屋を出て行く。
「何するんだよ!この暴力女!そんなんだと直ぐに愛想つかされるぞ!」
クッションのダメージから立ち直れないまま、駿が減らず口を叩く。
「だから!そんなんじゃないって言ってるでしょ!!!」
沙耶は玄関でそう叫ぶと、外へ飛び出して行った。
火照ってしまった顔を、冷やしたかった。
辺りは民家もないから、真っ暗で、満天の星空が、沙耶を迎える。
――めまぐるしい変化に、ついていけない。
沙耶は深呼吸して、自分を整えようとするが、上手くいかない。