例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても

執拗に問いかける駿のせいで、沙耶の頭にまた甦る。


『俺のお嫁さんになって。』


真剣な石垣の眼差し。
切ない顔。


「わぁ!!!!わぁわぁわぁ!!!」
「なんだよ?どうしたんだよ?」

ぼっと顔を赤くした沙耶の発する奇声に駿は一瞬たじろぐ。


「うるさいうるさいっ。あんたのせいで、変なこと思い出しちゃったじゃないのよ!」
「変な事って何だよ?てか、姉ちゃん顔赤くねぇ?やっぱりあの二人と何かあっ……てぇ!!!」

追及を止めない駿の顔に、沙耶は傍にあったクッションを投げつけて、部屋を出て行く。

「何するんだよ!この暴力女!そんなんだと直ぐに愛想つかされるぞ!」

クッションのダメージから立ち直れないまま、駿が減らず口を叩く。


「だから!そんなんじゃないって言ってるでしょ!!!」


沙耶は玄関でそう叫ぶと、外へ飛び出して行った。

火照ってしまった顔を、冷やしたかった。

辺りは民家もないから、真っ暗で、満天の星空が、沙耶を迎える。


――めまぐるしい変化に、ついていけない。


沙耶は深呼吸して、自分を整えようとするが、上手くいかない。
< 7 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop