例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても


――これから、どうしよう。


廣井の話だと、手にした財産は生活に全く困らない額だった。
ただ、それを維持し、運営していかなければならないとなると、沙耶の手に負える代物ではないと、末恐ろしく感じる。

貧乏性な沙耶は、節約や倹約、汗水垂らして働くのは得意だが、会社運営なんて全くの素人な為、分かり兼ねていた。
いや、途方に暮れていた、と言う方がしっくりくるかもしれない。

かと言って、誰に教えを請えばいいというのだろう。
廣井はかなり助けになるだろうが、もっと身近で頼りになる人は居ないものか。



――石垣はあんなだし……


100メートル先の隣家に電話を借りに行こうか悩みつつ、足はそちらの方へとふらふらと動き出す。誰に電話をするかは決まっていない。


と。

ふいに、遠くで車の音がしたなと思ったら、突然沙耶の歩いている道がライトで照らされた。

光を背に受けつつ、こんな田舎に、こんな時間通る車なんて珍しいと思った。

とりあえず、沙耶は轢かれないよう端に身を避けるが、車は一向に先に行かず、それどころか、停止したように思える。


「――――?」


不審に思った沙耶が振り返るのと、運転手が車から降りて来たのは同時だった。


「本当に貴女って人は……こんな夜道を一人で歩くなんて、危なっかしいにも程があります。」

「あっ、……」


困った顔で、そこに立っているのは、栗色の髪色をした、あの日出逢っていた、もう一人の男の子。


「坂月さん……」


最後に会ったのはいつだったか。

確か水をぶっかけてしまったあの日。

その日を境に、沙耶は坂月とは顔を合わせていなかったし、連絡も取っていなかった。


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