魔法の使えない不良品伯爵令嬢、魔導公爵に溺愛される2

歪んだ兄妹

 屋敷に戻ると、二人は互いの世界に浸っていた。
「あはは! あいつさえ消せば、セシリアスタはあたしのものだ……」
「美しい姫君だった。きっともっと話せば、僕と恋に落ちてくれるさ」

 そんな二人を、一人の従者が出迎えた。
「おかえりなさいませ。ヴィクター様、ビビアナ様」
 その言葉に、二人は振り返った。
「ああ、ただいま」
「カーバンクルは?」
「それがさ~、不良品の所為で逃がしちゃったの」
 目を細める従者。「不味いですね……」と言葉を続ける。
「旦那様にどうお話なされるおつもりで?」
「そんな事よりも、僕は姫君に出会ったんだ。あの子は僕の運命だよ」
 うっとりと顔を赤らめるヴィクターに、ビビアナは「はあ?」と鼻で笑った。
「あんな不良品のどこがいい訳?」
「不良品?」
 ビビアナの言葉に、ヴィクターも従者も首を傾げた。ビビアナは言葉を続ける。
「あいつ、魔力は馬鹿みたいに多いけど、魔法が一切使えない不良品なんだよ。あ~、おっかしい」
「ビビアナ、僕の未来の伴侶を侮辱するな」
 ヴィクターは声を荒げるが、ビビアナは動じてもいなかった。
「それよりも……あの不良品さえ消すなりどうにかすれば、セシリアスタはあたしのものだよ!」
 あはははは! と高笑いするビビアナに、従者は納得する。
「なるほど。カーバンクルのこともお二人のことも、その『不良品』……レティシア・ユグドラスが関係しているということですね」
「そういうことになるね」
「わかりました。旦那様にご報告しておきます」
 従者は頭を垂れ、その場を後にした。その間も、二人はまだ話に夢中だった。
「彼女をお茶に誘うには、どうすればいいか……」
「あ、兄さま、あたしが招待状送ろうか? 確実に来るように、カーバンクルを餌にしてさ」
「なんて素晴らしいアイディアなんだ! 流石だよビビアナ!」
 そう言って話を進める二人。この二人は、自分の為ならば相手がどう感じようと、どうでも良いと思っているのだった。
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