A Maze of Love 〜縺れた愛〜
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二人が出会ったのは、今からちょうどひと月ほど前。
6月初旬の晴れて蒸し暑い日のことだった。
その日、授業はなく、渚は別の用事のために昼ごろ、家を後にした。
アパートから駅までは徒歩20分。
普段は自転車を使うのだけれど、その日は歩くことにした。
夕方から雨の予報だったから。
歩き始めてすぐ、遠くで雷鳴が轟きはじめた。
見上げると、西の空が気づかないうちに真っ暗になっている。
まだ10分ほど歩かなければならないのに。
どうかそれまで、お天気が持ちますように。
いつ降ってきてもいいように折りたたみ傘をバッグから出し、足早に駅を目指した。
けれどその直後、急にひんやりした風が吹き抜け、ぽつぽつと大粒の雨が落ちてきたと思ったとたん、一瞬で強い雨に変わった。
いや、強いどころの騒ぎではない。
あっという間の豪雨。
歩くのもままならないほどの横降りと強風に変わった。
折りたたみ傘はまったく用をなさず、とにかく間近にあったマンションの軒下に飛び込んだ。
けれど、雨はますます激しくなり、そこにいても濡れてしまいそうだった。