極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 一言で言えば、クライアントと翻訳者の橋渡しをするのだが、もちろんそれだけではない。翻訳された文書のチェックや請求書の作成など、さまざまな業務を担う。しかし、自分が直接、翻訳をすることはない。
 コーディネーターとして毎日忙しく働いているうちに、子どもの頃の夢を思い出した。幼い頃、何度も読んだ大好きな物語が、実は知らない国の言葉で書かれた本で、誰かが日本語に翻訳してくれたおかげで、二葉が楽しく読めていること。それを知ったときに、二葉も物語の翻訳をしてみたいと思ったのだ。
 今の仕事では翻訳に関わることはできている。けれど、ちょっと違う。
 忙しくなればなるほど、やっぱり夢を叶えたいという思いが強くなり……ついに一年前、二十七歳のときに退職した。
 以来、フリーランスの翻訳者として複数の翻訳会社に登録して、論文や報告書などの翻訳をしている。
 念願の小説――もっと具体的に言うと、ファンタジー小説――の翻訳はまだできていない。
 小説の翻訳家になるには、有名な翻訳家の弟子になって下訳をするとか、翻訳コンテストで賞を獲るとか、いくつかの方法がある。けれど、どれも狭き門だ。
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