極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 言うなり奏斗は二葉の右手を取った。
「え、あの」
「俺は紳士だからね。テーブルまでエスコートするよ」
 奏斗がおどけた口調で言い、二葉は思わず「ふふっ」と笑った。二葉の笑みを見て、奏斗はホッとしたように息を吐く。
「それじゃ、お嬢様、参りましょうか」
「ええ、お願いします」
 二葉はわざとツンと澄まして立ち上がった。
 そのまま奏斗に手を引かれてダイニングの椅子に座らせてもらう。彼はすぐにカウンターを回って、キッチンから丸いパスタ皿を二つ運んできた。
(そうめんなのにパスタ皿で!?)
 そのことに驚いたが、目の前に置かれた皿を見て、もっと驚いた。
「わぁ……」
 茹でられたそうめんの上に、食べやすくカットされたトマトとオクラ、細く切られたキュウリと大葉、茹でてほぐした鶏肉、錦糸卵が彩りよく盛られていたのだ。
「食欲がないときでも食べられる、俺特製サラダそうめんだ」
「おいしそうです」
 二葉は本当に久しぶりに、食べ物を見て食欲が湧くのを感じた。
「二葉の箸はどれ?」
 奏斗は二葉の前に箸立てを置いた。二葉は自分の赤い塗り箸を取ったものの、来客用の箸はそこにはないことに気づく。
「待ってて。奏斗さんのお箸を――」
 二葉が立ち上がろうとすると、奏斗は右手を軽く上げて止めた。
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