極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 マイナス思考にならないように気をつけているのに、ふと気を抜けばどうしても不安になる。
 二葉はソファの上で体を丸めた。
 キッチンの方から鍋に水を入れる音やガスコンロに点火する音が聞こえてきた。それからなにかを刻む音も。
(なんか……すごく安心する)
 両親が死んでから、家の中はひどく静かになった。当たり前だけど、二葉がソファに座っていたら、キッチンは静まりかえっていたのに。
 二葉はソファの背に頭をもたせかけた。奏斗が立てる物音を聞いているうちに、なんだか眠くなってくる。
 いつの間にかウトウトしていたら、額に誰かの手が触れる感覚がして、ハッと目を開けた。
「きゃっ」
 すぐ目の前に奏斗の顔があって、二葉は思わず声を上げた。奏斗は二葉の額に触れていた手を離して、体を起こす。
「驚かせてすまない。顔色が悪かったから、熱があるのかと心配になったんだ」
「あ、いえ。大丈夫です」
 二葉はソファに座り直した。
「ランチできたよ。ソファで食べる? それともダイニングで食べる?」
「じゃあ、ダイニングで」
 二葉が答えると、奏斗は左手を差し出した。
「え?」
 二葉は不思議に思って、彼の手から顔へと視線を動かした。
「掴まって」
< 113 / 204 >

この作品をシェア

pagetop