極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 奏斗は苦しそうな口調で言った。二葉は意味がわからず、怪訝な声を出す。
「私が奏斗さんを嫌うことなんてありません。奏斗さんこそ私が嫌なんでしょう?」
「そんなわけない。違うんだ」
 二葉は静かにベッドを下りて、部屋のドアに近づいた。奏斗の声が話を続ける。
「俺が悪いんだ。二葉のそばにいると抑えが利かなくなる。二葉はまだつわりで大変なのに、二葉を欲しいと思ってしまう。大変なときに、俺が二葉に欲望を感じていたら、嫌だろう?」
「そんなふうに思ってたんですか?」
「二葉を大切にしたいって思っているのに、二葉を好きすぎる気持ちを抑えられないんだ」
 二葉はそっとドアを開けた。ドアの向こうでは、奏斗が苦しげに表情を歪めて立っていた。
「だから、よそよそしくしてたんですか?」
「……すまない」
「私の方こそ……奏斗さんを気遣えなくてごめんなさい」
 奏斗はぎこちなく微笑んだ。
「二葉が謝ることなんてない。俺が我慢すればいいだけの話だ」
 奏斗は二葉をふわりと抱き寄せた。温かな胸に包まれて、二葉はほうっと息を吐く。
「奏斗さんに我慢させるのは申し訳ないんですけど、でも、たまにはこんなふうにギュッてしてほしいです」
「そうだな。俺も二葉を抱きしめたい」
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