極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 フローラが事情を説明してくれたので、二葉はフローラと一緒に窓際の席に座ることができた。
『ここからならフラットが見えるから、中に入れるようになったらわかるわね』
 フローラが独りごちたとき、『災難だったわねぇ』と言いながら、カフェのオーナーの女性が紅茶のポットとティーカップを二客、それにサンドイッチをトレイに乗せて運んできた。
『本当よぉ。でも、死者も怪我人も出てないみたいだから、それだけが幸いかしらねぇ』
 フローラはしゃべりながら、ティーポットからカップに紅茶を注いだ。
『ゆっくりしていってね』
 五十歳くらいのオーナーの女性に優しく声をかけられ、二葉は小さく会釈をした。
『ありがとうございます』
 フローラが二葉に紅茶を勧める。
『どうぞ、二葉』
『ありがとうございます』
 二葉は促されるままカップを持ち上げた。口元に近づけたら、ふわんと高い香りがして、さっきまで鼻を突いていた焦げ臭い匂いがほんの少し和らいだ。
 早朝の肌寒い外にいたので、いつの間にか体が冷え切っていたらしい。熱い紅茶が喉を通るとともに、冷えて張り詰めていた体からゆるゆると力が抜けて、ほうっと息を吐いた。
『こんなことになっちゃって、ごめんなさいね』
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