極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 三階に着くと、部屋の前に水が溜まっていた。
『どうしてこんなところまで……』
 フローラは訝しげに言いながらドアを開けて、凍りついたように立ちすくんだ。
『フローラ?』
 二葉は彼女の肩越しに中を覗き込み、直後、同じように動けなくなる。
 天井から水が滴り落ちて壁紙を濡らし、フローリングに水たまりができていたのだ。
『そんな……』
 フローラは悲痛な声を上げて、おぼつかない足取りで中に入った。二葉も彼女に続く。
 キッチンも二葉が借りている部屋も、同じような有様だった。壁紙は濡れて変色し、ベッドも湿っている。
「嘘でしょ……」
 慌てて私物を確認する。
 明後日ここを出る予定だったため、だいたいの荷造りをしていたので、スーツケースに入れていた衣類は無事だ。バックパックに入れてクローゼットの棚に置いていたノートパソコンも、水濡れを免れた。今日着る予定で出していた服の下敷きになっていたため、スマホも大丈夫。けれど、昨日買ってデスクの上に出していたペーパーバッグは、五冊ほどが濡れて波打っていた。
「はぁ……」
 思わず椅子に座り込みそうになったが、座面が濡れていたので、かろうじて踏みとどまった。
(フローラ……ショックだろうなぁ……)
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