極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 彼女の気持ちを想像して胸が痛くなったそのとき、玄関の方から話し声が聞こえてきた。聞き覚えのあるその声は、火事だと教えてくれたジャクソンのものだ。
 ジャクソンとしばらく話したあと、フローラはスマホでどこかに電話をかけた。話している内容からすると、相手は離れて住んでいる娘のようだ。
『それじゃ、お願いね』
 フローラが電話を終えたタイミングで、二葉は廊下に出た。
『フローラ、あの』
 二葉は雑巾を借りようと思ったのだが、フローラは二葉を見て申し訳なさそうな表情になる。
『あのね、二葉、さっきミスター・ジャクソンと話したんだけど、彼の部屋はここよりもひどいんですって。上の階の熱を感知してスプリンクラーが誤作動したせいで、部屋中水浸しになってしまったそうよ。その水が天井の隙間から漏れて、うちもこんなことに……』
『そうだったんですか……』
『それでね、娘と話して、私はしばらく娘の家に泊めてもらうことにしたの。だから、二日早くて申し訳ないけど、チェックアウトしてもらえるとありがたいんだけど……』
 フローラは悲しみでいっぱいの表情で言った。
(ご主人や家族との思い出の家が、こんなことになってしまったんだもの……。フローラの方がつらいよね)
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