極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 二葉はこくりと頷いた。
『はい。今まで一ヵ月近くお世話になりました。ありがとうございました。どうか気を落とさずに、お元気でお過ごしくださいね』
『本当にごめんなさいね』
 フローラは目に涙を浮かべながら、二葉をハグした。二葉より少し小柄なフローラの背中を、二葉はそっと撫でる。
『気にしないでください。フローラと過ごせて本当に楽しかったです。ロンドンにお母さんができたみたいで、嬉しかったです』
 涙が込み上げてきて、二葉は強く目をつぶった。突然お別れしなければいけなくなったことが、とても悲しい。
『それじゃ、チェックアウトの準備をしますね』
 二葉はフローラの体をギュッと抱きしめてから腕を解いた。借りていた部屋に戻って、スウェットから白いシャツとデニムのワイドパンツに着替えた。
 濡れてしまったペーパーバッグはビニール袋に入れてからスーツケースに詰める。そのほかの荷物をスーツケースとバックパックに入れて、最後にライトイエローのコートを羽織った。
 二葉がバックパックを背負い、スーツケースを転がして廊下に出ると、フローラはダイニングの椅子に座っていた。二葉を見て立ち上がる。
『泊まるところに困るわよね。本当にごめんなさいね』
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