極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「なるほど。そのままだと味付けを薄く感じたのは、そういうわけだったんですね」
 奏斗は納得したように頷いた。二葉はスコーンを割ってクロテッドクリームとジャムを塗りながら答える。
「はい。それに最近は、イギリス人の有名なシェフが注目されるようになっているみたいです。滞在中にテレビ番組で、海外で活躍しているシェフが取り上げられているのを見ました」
「それじゃ、いつまでもマズイなんてイメージを持ってたらダメですね」
 奏斗が柔らかく微笑み、二葉もつられて頬を緩めた。
 昨日会ったときは、彼がこんなにも聞き上手だったなんて知らなかった。彼と話すのはとても楽しい。
 こんなふうに誰かと話が盛り上がったのは、いったいいつ以来だろう。
(会社を辞めて以来……ううん、お父さんとお母さんが亡くなってからは初めてだ……)
 二葉が表情を曇らせたのに気づいて、奏斗は眉を寄せた。
「どうしました? 口に合わないものがありましたか?」
「あ、いいえ」
 二葉は顔を上げて笑みを作った。
「それにしては暗い表情ですよ」
 奏斗が心配そうな声を出したので、二葉は軽く首を横に振った。
「いいえ、お腹は空いてます。ただ……両親のことを思い出してしまって」
「ホームシックですか?」
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