極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 初めて二葉にあったとき、奏斗が拾うのを手伝った本だ。
「この本、五百ページあるんです。さすがに分厚いなぁ、全部読むのにどのくらい時間がかかるんだろう、大変そう……って思う反面、どんなストーリーなんだろうってワクワクするんです!」
「ああ、その感じ、わかるなぁ」
「ですよね!?」
 お互いまったく違う分野なのに、はっきりと夢を描いてそれに向かって努力している。その気持ちを語り合い、分かち合う。
 こんなにも胸が躍る感覚は初めてだ。
 その喜びとともに愛しさが募る。
 キスをする口実を探して、奏斗はベッドのヘッドボードに置いたカゴから、銀色の紙に包まれた小さなチョコレートを一つつまんだ。
「チョコレート食べる?」
 奏斗の手の中の包みを見て、二葉が言う。
「あ、それ、シャンパントリュフ。奏斗さんがシャワーを浴びている間に一つ食べたけど、すごくおいしかったです。奏斗さんも食べてみてください」
「二葉とはいろいろなものを共有したい。おいしいものも」
 奏斗は包みを開けて唇に挟むと、二葉の顎をつまんで顔を近づけた。
 奏斗の意図に気づいて、二葉は目を丸くしながらも小さく唇を開いた。
 柔らかな唇の間にチョコレートを押し込んで、カリッと歯を立てる。蕩けたガナッシュが零れそうで、二葉の唇に自分の唇を押しつけた。
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