極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる


 天王寺駅前のバス停に着くというアナウンスで目が覚め、まだ眠気が残るままバスを降りた。天王寺駅から電車に乗って最寄り駅で降り、スーツケースを引きながら両親と住んでいたマンションの部屋まで歩く。
「ただいま……」
 おかえり、と迎えてくれる人を失った家に戻るのは、いつもとてもつらい。
 それでも、両親との思い出の残る家なので、3LDKという一人で住むには広すぎる部屋だが、手放せずにいる。
 二葉は廊下を歩いてリビング・ダイニングに入った。リビングのローチェストに、仏壇代わりに置いている両親の写真に手を合わせる。二葉がまだ翻訳会社で働いていたとき、ボーナスで二人に温泉旅行をプレゼントした。そのときに温泉旅館の仲居にスマホで撮ってもらい、母が二葉のスマホに【ありがとう、楽しんでます】というメッセージと一緒に送ってきた写真だ。
 父と母は寄り添って幸せそうに微笑んでいる。
(お父さん、お母さん、おじいちゃんが急性心不全で倒れて、手術を受けたんだって。おばあちゃんが不安がってるから、会いに行ってくるね。お父さんとお母さんも会いに行けたらよかったのにね……)
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