極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 もっと早く連絡を取り合っていれば、父も――もしかしたら母も――祖父母と会えたかもしれない。けれど、祖父が倒れたからこそ連絡が来たのだと思うと、複雑な心境だ。
 二葉はスーツケースを開けながら大きなあくびをした。
 時差ぼけもあるのか、バスで寝たのにまだまだ眠くてたまらない。
 スーツケースの中からイギリスで買った本や洗濯済みの衣類を取り出した。化粧品類を出したとき、ふと生理用品に目が留まる。
(あれ……この前、生理が来たのっていつだったっけ……?)
 ここ最近、来ていないことに気づいて、ドキリとする。
 慌ててバッグから手帳を取り出し、カレンダーのページを開いた。
 最後の生理は三月の初旬だ。一ヵ月半、生理が来ていない。
「そんな、まさか」
 イギリスを経つ前からずっと体がだるかった。吐き気は飛行機酔いで、眠くてたまらないのは時差ぼけのせいだと思っていたけれど……。
「でも、待って。奏斗さんはちゃんと避妊してくれてた」
 声に出してそう言ってみたものの、避妊が百パーセント確実ではないことはわかっている。
(けれど、本当にただ遅れているだけかもしれないし……)
 あれこれ考えていても埒が明かない。
 二葉はバッと立ち上がった。財布を入れたバッグを持って近所のドラッグストアに急ぎ、妊娠検査薬を一つ購入した。緊張したまま帰宅し、トイレに入る。
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