ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(な……なんでお異母姉様がこんな方と肩を並べて歩いているの!?)
思わずぼぅっと引き込まれた。
目の前の名の知らぬ殿方は、自分の隣の公爵令息より断然イイ男だ。この女には勿体ないくらいの。
なんで、こんな性悪女にばかりにイイ男が群がって来るのだ。本っ当に許せない!
「名乗り出るのが遅くなってしまって申し訳ありません」ユリウスが場にそぐわない明るい声音で言う。「私はジョン・スミスと申します。辺境の地の男爵家の長男です。聖女であるクロエ様の補佐役をやらせて頂いております」
彼の自己紹介に、忽ちコートニーの高揚していた気分は急降下する。
(辺境の男爵令息ですって? なぁ~んだ、残念。っていうか、野暮ったいブスなお異母姉様にはお似合いだわぁ~っ! ぷぷっ)
彼女は、やっぱり自分の運命の相手はスコット・ジェンナー公爵令息しかいないと、改めて思った。
目の前の田舎者は、たしかに彼よりかは見目麗しかもしれないが、所詮は権力を持たない男爵家の倅。パリステラ侯爵家の令嬢には不釣り合いだ。
だから、もう、興味がない。