後ろの席の五十嵐くんと私の、2人だけの秘密
『なんで何も言わずに帰ったの?』
――怒ってる…?まさかね。
『気持ちよさそうに寝てたし、起こさなくてもいいかなって思って。』
送信ボタンを押した途端、既読がついた。
そして、すぐにメッセージが表示される。
『松田さんに起こして欲しかった』
――そんな、ずっといて欲しかった、みたいなのやめてよ。
期待しちゃうじゃん。
五十嵐くんが、私を求めてくれてるって思いたくなるでしょ?
勘違いしたくない。
『そっか。ごめんね。』
次は起こすよ。って文字は消してから送信ボタンを押した。
次があるって思いたくない。期待して、期待を裏切られるのが怖いから。
既読になったけど、返信は来ない。
「紗絵ー?早くご飯食べよう?」
「あ、はーい!」
お母さんの声に慌てて返事をすると、私は机の上にスマホを置いて、そのままリビングへ向かった。
結局、その日は、何も送られてこなかった。