後ろの席の五十嵐くんと私の、2人だけの秘密
「すみません。」
五十嵐くんがそう声を掛けて、周りの人に頭を下げながら私の方に近づいてきてくれた。
「そっちに寄って。」
五十嵐くんが目線を送ったドア付近のスペースに移動し、人の隙間を埋めるようにしてドアのそばに立つ。五十嵐くんは私の真正面に立った。
「やべ、俺のバッグ邪魔だな。」
そう言って、人に当たらないようにリュックと部活バッグを肩からおろして、荷物棚に乗せた。
荷物棚にバッグを乗せるときに、五十嵐くんの体が私の体にちょっと触れた。
「ごめん。当たった?」
「う、ううん。大丈夫。」
そう言いながら、私は自分が背負っているリュックを体の前に移動させた。
「…そのリュック邪魔。」
「え!?そう?後ろに背負ってる方が場所取るかなと思って…」
そう言うと、五十嵐くんがちょっと屈んでわたしの耳元で囁いた。
『俺が松田さんに近づけないじゃん。間にあると邪魔。』
また心臓が跳ねた。
『貸して。荷物棚に上げるから。』
『…いや。』
『なんで!?貸せって』
『やー』
『えー?』
そんな問答をしているうちに、電車が、発車してガタンと動き、合わせて油断していた私の身体がちょっとよろめく。