幸せでいるための秘密
美咲は軽く腕を組み、難しい顔をして眉を寄せた。
「……波留が優しい人なのは知ってる。大学の頃は幹部でもないのに部活のことを手伝ってもらったし、相談だって色々聞いてくれたしね」
「うん」
「でも、付き合うのはちょっとね。単純に自分より顔の綺麗な男と並んで歩きたくないってのもあるけど、やっぱり波留って何考えてるかよくわからないところがあるから」
そこで言葉を切り、美咲は目を逸らす。
「なんか……変な秘密を抱えてそうで、ちょっと怖くて」
私たちの間に奇妙な沈黙が流れた。微笑む波留くんの顔が浮かんで消える。美咲が言おうとしていることが、ほんの少しだけ、私にはわかる。
私も波留くんが、……彼の好意が、少し怖い。
「あ、ごめん。百合香の元彼なのにこんなこと言って」
「ううん、いいよ。私から聞いたことだし、正直に答えてくれてよかった」
「そっか。まあ、とにかく気をつけなよ。今の百合香は波留に莫大な借りを作っているのと同じなんだから」
ストローを指先でいじりながら、美咲はいつになく真剣な声で言った。
「付き合う気がないなら、危機感持って生活した方がいいよ。言ってる意味わかるね?」
「わかります」
私も両肩を小さく縮め、真摯な態度で美咲を見つめる。
彼女は念押しするようにひとつ頷き、それからやっと表情を崩して傍らのメニューを取ると、
「ま、今はとりあえずダメ彼氏サヨナラ記念ってことで!」
と、巨大なチョコレートパフェの塔を指さした。
「……波留が優しい人なのは知ってる。大学の頃は幹部でもないのに部活のことを手伝ってもらったし、相談だって色々聞いてくれたしね」
「うん」
「でも、付き合うのはちょっとね。単純に自分より顔の綺麗な男と並んで歩きたくないってのもあるけど、やっぱり波留って何考えてるかよくわからないところがあるから」
そこで言葉を切り、美咲は目を逸らす。
「なんか……変な秘密を抱えてそうで、ちょっと怖くて」
私たちの間に奇妙な沈黙が流れた。微笑む波留くんの顔が浮かんで消える。美咲が言おうとしていることが、ほんの少しだけ、私にはわかる。
私も波留くんが、……彼の好意が、少し怖い。
「あ、ごめん。百合香の元彼なのにこんなこと言って」
「ううん、いいよ。私から聞いたことだし、正直に答えてくれてよかった」
「そっか。まあ、とにかく気をつけなよ。今の百合香は波留に莫大な借りを作っているのと同じなんだから」
ストローを指先でいじりながら、美咲はいつになく真剣な声で言った。
「付き合う気がないなら、危機感持って生活した方がいいよ。言ってる意味わかるね?」
「わかります」
私も両肩を小さく縮め、真摯な態度で美咲を見つめる。
彼女は念押しするようにひとつ頷き、それからやっと表情を崩して傍らのメニューを取ると、
「ま、今はとりあえずダメ彼氏サヨナラ記念ってことで!」
と、巨大なチョコレートパフェの塔を指さした。