幸せでいるための秘密
「二人とも、大学の頃と全然変わらないね」

「ほっとしたか?」

「どうして?」

「そう見えただけだ」

 本当にほっとしているとしたら、それはたぶん別の理由によるものだろう。

 言ってやりたい気もしたけど、笑って誤魔化す。どんな反撃が来るかわかったもんじゃない。

 ケーキをつっつきながら、四人で他愛ない話をした。仕事のこととか友達のこととか、話すことなんて結局のところ似たり寄ったり。私の場合は披露宴で椎名くんたちに聞かせた話を繰り返しているようなものだ。

「そういや中原、まだあいつと付き合ってんの?」

 だからこの話題も繰り返すのだろうと、ある程度は覚悟していた。

 隣の視線を無視しながら、私はチーズケーキにフォークを刺す。

「続いてるよ。一緒に住んでる」

「同棲? いいねー」

「里野は元気? 仕事は何してるの?」

「警察官。交番勤務で三交代制だから、休みがなかなか合わなくてね」

「へえ、そうなんだ。でもそれなら、里野が休みの日はご飯とか作ってもらえるんじゃない?」

 美咲、と達也くんの唇が動いた。

 たしなめるような視線が美咲へ、それから私をかすめてその隣をさまよう。構わず、私は続けた。

「いや、結局私が作ってるよ。昔はたまーに簡単なの作ってくれたりしたけど、今はあんまり」

「えーっ、そうなの? 共働きなのに、ちょっとフェアじゃないよね、それ」

「本当それ、本人に言ってやってよ。私の言うことなんてほとんど生返事なんだから」

「だってそれじゃあ、百合香は毎日仕事から帰ってきて、休みで寝てる里野の分までご飯作ってるんでしょ? 洗い物は?」

「全部わたし」

「嘘でしょ、ありえない……漫画みたいなクズ男じゃん……」

 フォークが鋭い音を立ててケーキを断った。

 隣の皿からだった。



「百合香、本当に幸せなの?」


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