幸せでいるための秘密
目が覚めてすぐ、身体の違和感に気がついた。
喉がカラカラに乾いている。全身が鉛のように重い。
胸に渦巻く不快感を堪え、とりあえず身体を起こそうとする。すると、腰回りにまとわりついていた温かなものが、私の背中をなだめるようにひと撫でした。
「おはよう」
頭上から声。
おそるおそる顔を上げる。
「い、……樹くん」
「うん」
ずっと早くから起きていたらしい樹くんの穏やかな笑み。
差し込む朝日に照らされる素肌の逞しく鍛えられた様に、昨夜の姿を思い出して一人で赤面してしまう。昨日はその、すごかった。自分のものじゃないような声がひっきりなしに漏れていたし、途中から完全に意識を飛ばしてしまったような気がする。
(なんか、既視感があるなぁ)
そうだ。彰良の家を飛び出した日の夜、記憶をなくすほど酔っぱらった私は、樹くんを抱き枕にしてそのまま眠ってしまったんだ。
その時も確かこんなふうに、目が覚めると同時に樹くんの声を聞いた。そして一気に青ざめたんだ。私、やってしまったんじゃないか、って。
(あの頃はまさか、本当に樹くんの恋人に戻るとは思わなかったな……)
いろいろな出来事があっという間に過ぎ去って、気づけば私は再びこの家に戻ってきた。
でもこれで、大きな問題はすべておしまい。これからはもう、ただ穏やかな日々が淡々と続くだけのはず。
「思ったより声がひどくない」
流れゆく走馬灯に思いを馳せていると、樹くんの長い指が私の喉を軽くさすった。
「もっと無理させてもよさそうだな」
「だめ、絶対だめ」
あのね樹くん、気絶と睡眠は似ているようで別物なんだよ。
あんなのを毎晩のようにされたら確実に私の身がもたない。もちろんその、嫌だとか不快とかいうわけではなくて、……むしろ良すぎて戸惑ったほどだけど、体力の限界というのは気持ちとは別の問題だ。
「し、仕事いかなきゃ」
「今日は祝日だ」
「あれ、そうだっけ?」
「ああ。だから大丈夫」
起き上がりかけた私の身体に逞しい腕が巻きついてくる。
ぎゅうと優しく抱き寄せられて、地肌に直接体温を感じた。あたたかい。事後の気だるさがよみがえり、私は樹くんの胸に寄りかかると再び枕に顔をうずめる。
「……眠たい」
「ああ」
首を彼の方へ向けると、小さなリップ音とともに優しいキスが降ってきた。
まぶたが落ちる。抗い切れない安心感に、私の全身が深く深く包まれていく。
「俺も、眠い」
時計の秒針が動く音が聞こえる。
せっかくの貴重な祝日が、刻一刻と過ぎていく。
でも不思議と、もったいないような気はしない。
(お休みの日を恋人とベッドで過ごすだなんて、ちょっと贅沢でいいかもしれない)
喉がカラカラに乾いている。全身が鉛のように重い。
胸に渦巻く不快感を堪え、とりあえず身体を起こそうとする。すると、腰回りにまとわりついていた温かなものが、私の背中をなだめるようにひと撫でした。
「おはよう」
頭上から声。
おそるおそる顔を上げる。
「い、……樹くん」
「うん」
ずっと早くから起きていたらしい樹くんの穏やかな笑み。
差し込む朝日に照らされる素肌の逞しく鍛えられた様に、昨夜の姿を思い出して一人で赤面してしまう。昨日はその、すごかった。自分のものじゃないような声がひっきりなしに漏れていたし、途中から完全に意識を飛ばしてしまったような気がする。
(なんか、既視感があるなぁ)
そうだ。彰良の家を飛び出した日の夜、記憶をなくすほど酔っぱらった私は、樹くんを抱き枕にしてそのまま眠ってしまったんだ。
その時も確かこんなふうに、目が覚めると同時に樹くんの声を聞いた。そして一気に青ざめたんだ。私、やってしまったんじゃないか、って。
(あの頃はまさか、本当に樹くんの恋人に戻るとは思わなかったな……)
いろいろな出来事があっという間に過ぎ去って、気づけば私は再びこの家に戻ってきた。
でもこれで、大きな問題はすべておしまい。これからはもう、ただ穏やかな日々が淡々と続くだけのはず。
「思ったより声がひどくない」
流れゆく走馬灯に思いを馳せていると、樹くんの長い指が私の喉を軽くさすった。
「もっと無理させてもよさそうだな」
「だめ、絶対だめ」
あのね樹くん、気絶と睡眠は似ているようで別物なんだよ。
あんなのを毎晩のようにされたら確実に私の身がもたない。もちろんその、嫌だとか不快とかいうわけではなくて、……むしろ良すぎて戸惑ったほどだけど、体力の限界というのは気持ちとは別の問題だ。
「し、仕事いかなきゃ」
「今日は祝日だ」
「あれ、そうだっけ?」
「ああ。だから大丈夫」
起き上がりかけた私の身体に逞しい腕が巻きついてくる。
ぎゅうと優しく抱き寄せられて、地肌に直接体温を感じた。あたたかい。事後の気だるさがよみがえり、私は樹くんの胸に寄りかかると再び枕に顔をうずめる。
「……眠たい」
「ああ」
首を彼の方へ向けると、小さなリップ音とともに優しいキスが降ってきた。
まぶたが落ちる。抗い切れない安心感に、私の全身が深く深く包まれていく。
「俺も、眠い」
時計の秒針が動く音が聞こえる。
せっかくの貴重な祝日が、刻一刻と過ぎていく。
でも不思議と、もったいないような気はしない。
(お休みの日を恋人とベッドで過ごすだなんて、ちょっと贅沢でいいかもしれない)