ハイドアンドシーク
「おはよー」
教室に入るとさっそくクラスメイトに囲まれた。
こうして東雲さんに挨拶したがるのはいつものこと。
邪魔にならないように、そそくさと横を通り抜けようとしたとき。
「鹿嶋!」
真っ先に呼ばれたのはわたしの名前だった。
びっくりして足も止まる。
「え、どしたの……?」
東雲さんよりも先にわたしに反応するなんて珍しいね、って。
そういう意味で言ったつもりだったんだけど、
「どしたのはこっちのセリフだてめコラァ!!」
なんて逆に詰められてしまった。
するとまた別のクラスメイトが話し始める。
「お前が怪我したって聞いてよォ、いうて大したことねえだろって思ってたのによォ……うッ、なんでそんなにボロボロなんだよ鹿嶋ぁ……!!」
まさか泣き出されるとは思わなかった。
わたしの周りに集まった、わたしよりもずっと大きい男の子たちが。
うおーんうおーんとまるで狼の遠吠えのように泣いている。
ひええ……。
困ったわたしは隣の東雲さんを見上げる。
みんなのリーダーは肩をすくめただけだった。