婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 エーリヒは自分の立場の危うさを、よく理解していた。
 いつ殺されるか、わからない。
 そう思いながら、常に周囲を警戒していたのだ。
 だからこそ、自分を処分する計画も事前に知ったのだろう。
「でも、たとえ計画を知っていても、クロエがいなかったら逃げ出すこともできなかったからね」
「……そんな」
 お気に入りの玩具なら、片時も離さずに自分のものだと主張することも、大人になれば不要になり、処分することもあるかもしれない。
 だがエーリヒは人形ではない。人間だ。
 そんな扱いをする王女にも国王にも、怒りがこみ上げる。
「ひどいわ。そんなことをする人達は……」
「クロエ」
 憤りのまま言葉を口にしようとしたクロエを、エーリヒが抱きしめた。
 突然の抱擁に驚いてしまって、怒りが消えていく。
「エーリヒ?」
「あんな奴らがどうなろうと関係ないけど、クロエがあとで苦しむのは嫌だ。だから、落ち着いて?」
「あ……」
 そう言われて、自分が強く願ったことを叶えてしまう魔女だったことを思い出す。怒りのままに、ひどいことを願ってしまうところだった。
「ごめんなさい、エーリヒ。止めてくれてありがとう」
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