婚約破棄されたので、好きにすることにした。
「クロエが俺のために怒ってくれたことは、嬉しいよ」
 神々しいほどの笑顔でそんなことを言われて、恥ずかしくなって視線を逸らした。
「これくらい、当然よ。だって相棒だもの」
 慌ててその腕の中から抜け出しながら、そう言う。
 エーリヒの手が、名残惜しそうにクロエの黒髪に触れたことには、気付かないふりをした。
 そうでなければ、とても心臓が持ちそうにない。
「えっと、つまりエーリヒは、普通に出歩いても平気なの?」
「王城さえ出てしまえば、多分ね。俺を探す人は誰もいないし、処分しようとしていたものがなくなったからといって、わざわざそれを探す人もいない。王女殿下だって、またすぐ別のものに夢中になるだろう」
「……それなら、いいんだけど」
 でも王女はエーリヒを常に魔法で監視していたり、王城から出られないようにしていた。それを聞くと本当に王女が彼を忘れてくれるのか、少し不安になる。
 でも今から悩んでも仕方がない。
 できることからやるしかないと、気持ちを切り替えた。
 もともと、あまり思い悩む質ではない。
「じゃあ、さっそく一緒にギルドに行く?」
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