婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 物騒な言葉に、思わずエーリヒを見上げる。
 彼は自分のこととは思えないほど、淡々と話してくれた。
「アウラー公爵令嬢……。異母姉のクラーラのときと同じだ。もうすぐ婚約者が決まる年頃の令嬢が、いつまでもお気に入り人形を傍に置いているのは体裁が悪い。国王陛下は、そろそろ俺を王女殿下から引き離そうと思っていたようだ」
 いくら我儘放題の魔女カサンドラでも、国王には逆らわない。
 王女は魔女の力が判明したばかりの頃、あまり我儘を言いすぎて、国王によって塔に幽閉されたことがあるらしい。
 魔法の発達したジーナシス王国に特注して作ったというその部屋の中では、いっさい魔法を使うことができないという。
「それじゃあ、もう少し待っていたらエーリヒは自由になれたんじゃないの?」
 国王がそう決めていたのなら、わざわざ逃げ出す必要はなかったのではないか。そう指摘すると、エーリヒは首を振る。
「その場合は、命と引き換えの自由になっただろう。王女殿下のお気に入りの俺を、疎んでいる者も大勢いた。後々、面倒なことになっても困る。だから事故に見せかけて殺すつもりだったようだ」
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