婚約破棄されたので、好きにすることにした。
「ああ。ただ、移民として登録する場合には、気を付けなくてはならないことがある」
 エーリヒの目は、クロエを案じているように見えた。
 真剣な表情に、クロエも気を引き締める。
「うん。何かな?」
「このアダナーニ王国はただでさえ移民に厳しい。とくに国籍を持たずに移民になっている人間は、ギルド内でさえ差別されることが多いようだ。クロエはこの国の人間だけど、移民として登録してしまうと、移民を嫌う者達のターゲットにされてしまうかもしれない」
 この国の者によくあるような、茶色の髪にした方がいいかもしれないとエーリヒは言う。
 クロエがそんな差別を受けてしまうかもしれないと、心配してくれているのだろう。
 でも、侯爵家から逃げ出してきたクロエには、身分を証明するものは何もない。
 外見だけこの国の人間を装ったとしても、身元を証明できないのでは、やはり移民として登録されてしまうだろう。
 それなら、馴染みのあるこの色がいい。
「私なら大丈夫よ。そんなのには負けないから」
 にこりと笑って、そう言う。
「クロエがそう言うなら」
 エーリヒは心配しながらも、承諾してくれた。
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