婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 ふたりのことを、世間知らずの獲物が来たとでも思っていたのだろう。
 自由に生きられるという冒険者に憧れ、彼らのような者達の餌食になった人が、今までもたくさんいたのかもしれない。
 たしかに自由ではあるが、弱肉強食の世界でもある。
(それにしても……)
 クロエは自分の手を引いて歩くエーリヒを見て思う。
 見た目に反した力に、あの父が認めたほどの剣の腕を持っている。自分の魔法の力もかなりチートだと思ったが、彼もそれに近いのではないか。
(何だかすごいことになりそうな……)
 国籍を得るどころか、別の意味で目立ってしまうかもしれない。
(まぁ、いいか。私達が、誰も手が出せないくらいの実力者になればいい話だもの)
 今から心配しても仕方がないと、先を歩くエーリヒに続いてギルドの扉をくぐった。
 クロエは、目の前にある掲示板を眺めていた。
 コルクボードのようなものが貼られた壁には、たくさんの依頼書が貼られている。
 中には色褪せて、文字が読み取れないものもあった。受けてくれる者がいないまま、それでも貼り続けているところに、依頼主の執念を感じる。
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