婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 ここは可愛いギルド嬢だろう、とひそかに思ったクロエだったが、この治安の悪さだ。
 女の子には、危険すぎる職場かもしれない。
「ああ、見ない顔だと思ったら新人だったのか。初日にいきなり絡まれるのは不運だったが、あんた強いな」
 新規加入の手続きをしてくれた中年のギルド員が、感心したように言う。
「あれだけの人数を素手で叩きのめすとは。それに、多人数との戦いに慣れているな」
「ああ。元騎士だからな」
 あっさりと白状したエーリヒの言葉に周囲がざわつく。
(え、大丈夫なの?)
 クロエのことだと慎重なのに、自分のことにはあまりにも無頓着な彼の様子に心配になる。
 自分のことなど誰も気にしない。
 どうでもよいと思っているようだが、あの何重にも掛けられた魔法を考えると、王女はかなりエーリヒに執着している。
「元騎士だって? じゃあ、あんたはやっぱり貴族か?」
 エーリヒの目立つ銀色の髪を見つめながら、男がそう問いかける。
 銀髪はこの国の貴族にもいるが、どちらかといえば北方の国に多いらしい。冒険者ギルドに所属しようとしていたのだから、北国の人間だと思われていたのだろう。
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